格闘技と他のスポーツとの性質の違い
幼い時からずっと格闘技に励んでいる方々もいれば、他のスポーツを経験したのち大きくなってから格闘技を始めた方々もいらっしゃると思います。
前者については、実戦慣れしており、特に試合で実力を発揮できないというケースは少ないかもしれません。
他方、後者については、他のスポーツの試合と比べて、あまりのハードルの高さに驚かれた方も多いのではないでしょうか。
体力の消耗は激しいし、練習で沢山スパーリングをこなしたにもかかわらず、ガチガチになって大振りのパンチになってしまう。
こんな経験をされた方もいらっしゃることと思います。
では、なぜ、こんなにも練習と試合のギャップが大きいのか。
それは、相手に殴ったり、蹴ったりされるために、防衛本能が強く働くためであると考えます。
野球やサッカー等のスポーツでも緊張することはあるでしょう。
それが大事な一戦であればあるほど。
しかし、上記の点で、格闘技における緊張感はそういったスポーツとは性質が少し異なるのです。
もちろん、格闘技が他のスポーツより優れていると言っているわけではありません。
私自身、水泳や野球、卓球やバレーボールを経験したのちボクシングを始めましたが、圧倒的に緊張したのはボクシングの試合でした。
もちろん、試合慣れはしてくるのですが、やはり恐怖心からくる緊張感は完全には拭えませんでした。
話は少し逸れますが、最近、ブレイキングダウンという企画が世間では流行っているようです。
私もよく拝見させていただいているのですが、出場者の方々が今から人と殴り合うというのに楽しそうにしている様子に非常に驚くとともに、敬服してしまいました。
彼らが格闘技の試合においてガチガチにならないのは、喧嘩等を通じて、膨大な実戦経験を積んできたからでしょう。
しかし、試合を通じて実戦経験を積むには機会が少なすぎますし、かといって路上で喧嘩を繰り返せば行き着く先は目に見えています。
では、実戦経験が少なくても(初出場でも)、パフォーマンスを向上させることができる方法はないのでしょうか。
この点について、私が試合のパフォーマンスを向上させるのに最も効果があったと感じた方法を2つご紹介したいと思います。
なお、スパーリング等の対人練習はしっかりとこなしていることを前提として述べていくので、その点はご了承ください。
ゆっくり行動する
1つ目は、試合当日の朝から本番までのあらゆる行動速度をゆっくりにすることです。
できれば普段から心がけてほしいのですが、少なくとも試合の当日は意識的に速度を落としてほしいです。
例えば、試合前にシューズの紐を結ぶときやバンテージを巻くとき、ウォーミングアップをするときは、ゆっくりと丁寧に行うことをおすすめします。
こうすることで、集中力が高まり、気持ちを落ち着かせることができるようになります。
すると、相手の動きを冷静に観察し、分析することができるようになります。
また、相手のパンチもしっかりと見極めることができるようになり、被弾を減らすことにもつながります。
考えてみれば、これらは不思議なことではなく、テレビに出て試合をするような選手を観察すると、控室では、ゆったりと過ごしている様子が見て取れます。
そして、彼らは大抵冷静に闘っています。
感覚的なものなのか、理解して行っているのかはわかりませんが、試合前の過ごし方がパフォーマンスに影響していることは確かでしょう。
話を元に戻しますが、試合になると足の動きが悪くなるという方は、ウォーミングアップとして縄跳びをゆっくりと長めに跳ぶことをおすすめします。
足の血流がよくなり、足の緊張がほぐれるのを実感できると思います。
では、ゆっくり動くことがなぜパフォーマンスを向上させるのでしょうか。
ゆっくり動くことがパフォーマンスを向上させるメカニズム
人はストレスがかかると、副交感神経よりも交感神経が優位になります(交感神経>副交感神経)。
そこで、ゆっくり動くことを意識すると呼吸が深くなります。
呼吸が深くなると、高いレベルで交感神経と副交感神経のバランスが整います(交感神経=副交感神経)。
そして、これら自律神経のバランスが整うと、血液の流れが良くなります。
その結果として、パフォーマンスが向上する、ということが言えそうです。
小林(2016,p.26-42)参照
他にも期待できる効果
この記事では、ゆっくり動くことを意識すると、格闘技の試合のパフォーマンスが向上するというお話をしました。
しかし、実は、これは格闘技の試合に限ったことではなく、他のスポーツの試合についても使える技術なのです。
さらにいえば、ゆっくり動くことの効果は試合のパフォーマンスを向上させる以外にも沢山あるのです。
例えば、仕事の効率が上がるとか、異性にモテるとか、身体の不調が解消するといった効果等も期待できるのです。
これらは、私自身も実践してみて本当に効果があったので、是非読者の皆さんにも試していただきたいです。
3つの首を緩める
2つ目は、身体の力を抜くことです。
「そりゃぁ、そんなことはわかっているよ。」という声が聞こえてきそうです。
問題はどう実行するかですよね。
格闘技の試合においては、肩に力が入っている人、足の動きが悪くなっている人が多いです。
では、どうすればよいのでしょうか。
答えは、首を緩めることです。
首といっても、ここでいう首は、手首、足首、そして首の3つを指します。
この3箇所をほぐしてあげると、驚くほど肩や足が軽くなります。
まず、手首と足首のほぐし方です。
手足の力を抜いて手足をブラブラと振る。
これだけです。
「そんなこと⁉」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、これが最も簡単で効果的な方法です。
結構有名な方法かもしれませんが、以外にやっている方は少ないです。
考えてみて下さい。
格闘技の試合というのは、先ほども述べた通り、防衛本能が強く働き、身体が硬くなりやすい。
そのうえ、手首はバンテージやテーピングでカチカチ状態、足首についても足首を覆うようなボクシングシューズを履いていれば柔軟には動かせない。
つまり、力が入る要素満載なのです。
そこで、意識的に力を抜く行動が大切になってきます。
目安としては、身体がフワフワするくらいまで繰り返してください。
また、首については、ゆっくりと数回回してあげれば十分です。
参考文献
本番に強い人は、ヤバいときほど力を抜く(2015)[森下裕道]
この本は、緊張しにくくするテクニックが沢山紹介されています。
本記事で紹介した「力の抜き方」については、この本を参考にして、格闘技の試合向けにアレンジしたものです。
「ゆっくり動く」と人生がすべてうまくいく(2016)[小林弘幸]
小林弘幸先生の書籍は沢山出ていますが、結構同じ事を繰り返し述べられています。
そのため、もし、興味をお持ちになられた方は、上記の書籍だけ読んでおけば十分だと思います。
図解やイラストのおかげで読みやすくなっているためです。
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