あるロシア人ボクサーとの思い出

フィジカルトレーニング

出会いは突然に

ある日、いつもの通りジムに練習に行ったときのこと。

ジムのカウンターに一人の外国人男性が座っていた。

なにやら、手続きをしているようだ。

多くの日本人と違わず、私も少し物珍しそうに彼の方へ眼をやった。

座っているから背丈はどれほどあるかわからないが、肩幅は広く、腕は逞しく、顔は少し大きい印象だった。

後姿であったから顔の特徴までは詳細にはわからなかった。

そして、私は靴を脱ぎ、更衣室に入った。

「新しいメンバーさんかな?それともトレーナーさんだろうか?」

「でも、うちのジムではトレーナーさんを雇っているのを見たことがないな・・・」

そんなことを考えながら着替えをしていた。

しばらくして、更衣室から出ると、男性の横には、先ほどはいなかった日本人らしき女性が座っていた。

おそらく、話し方の親近感から、男性の奥さんか何かであろうと直感した。

なにやら、女性は男性に向かって「あーだこーだ」と言っていた。

それに対して、男性の方はというと、「うんうん」とおとなしそうに頷いていた。

これは、私の偏見なのかもしれないが、外国人男性と結婚する日本人女性はなにか気が強そうに感じる。

自己主張が弱いと言われる日本人の中で自己主張が強いタイプの日本人と、自己主張が強いと言われる外国人の中で自己主張が弱いタイプの外国人は、バランスが丁度良いのかもしれない。

そんなことを考えながらストレッチを始めていると、先ほどの男性がこちらに近づいてくるのが見えた。

どうやら、女性の方は帰ったらしい。

「こんにちは!はじめまして!ALXです!」と彼は英語で話してきた。

「こんにちは。はじめまして。TKCです。」と私は返した。

彼は、178cmの私が見上げるくらいの身長で、先ほどは気付かなかったが、辮髪を結っていた。

ボクシングを知っている方なら通じると思うが、オレクサンドル・ウシクのような風貌だった。

しばらく話していると、彼が新しいトレーナーであること、ロシアのアマチュアボクシングチャンピオンであること、カムチャッカ半島の出身であることがわかった。

そして、国内ではあまり馴染みのない、面白いトレーニングがスタートしたのであった。

トレーニング編

テニスボールドリブル(1人)

左足右足後ろにして構える(オーソドックスの構え)。

右手でテニスボールを地面に向かって叩く

③テニスボールが宙に浮いている間に右足左足入れ替える(サウスポーの構え)。

左手でテニスボールを地面に向かって叩く

⑤テニスボールが宙に浮いている間に左足右足入れ替える(オーソドックスの構え)。

①~⑤を繰り返す。

いわば、テニスボールでバスケのドリブルをするような感覚です。

この練習は、手の動きと足の動きを連動させるトレーニングなのだと思います(練習の意味については教えてくれなかったです)。

スローイングロック(スローイングメディシンボール)(1人)

大きな石(あるいはメディシンボール)を砲丸投げのように投げる。

走って拾いに行く

①~②を繰り返す。

おそらく、パンチ力を強化するトレーニングだっだのでしょう。

「世界のトップ選手は結構やっているよ。」とのことでした。

海外の選手は、山籠りの合宿の際、外に落ちている大きな岩を用いて練習するそうです。

たまに、サルに当たってしまうとか・・・

タッチゲーム(2人)

二人一組になる。

ボクシングの構えをする。

③二人の前足をくっつける

足をくっつけた状態で、相手の身体をタッチしつつ、相手にはタッチされないように避ける。

※サミング(目つぶし)防止のため、顔は触らない。

これは、打たせずに打つというボクシングの真髄を追及したトレーニングです。

テニスボールキャッチボール(2人以上)

二人一組になる。

ボクシングの構えをする。

一人がテニスボールを下投げする。

※上投げは危ないため。

もう一人がジャブやストレート、フック、ボディなどのパンチを打つ軌道でボールをキャッチする。

⑤交互に繰り返す。

ボールの落下地点は毎回異なります。

そのボールを、パンチを打つ格好で掴む練習です。

これによって、動く相手に正確にパンチを当てるトレーニングをすることができます。

エルボー打ちからのフック

①サンドバッグを肘打ちする。

②①を繰り返しながら、拳がサンドバッグに当たるまで、徐々に肘を開いていく

この練習を繰り返すことによって、手打ちではなく、肩の入ったフックを打つことができるようになります。

テクニック編

前手で打つストレート

①ボクシングの構えをする。

前手引くのと同時に後ろ足前に出す。

オーソドックスならサウスポーの、サウスポーならオーソドックスの格好になる。

③そのまま、後手(②で引いた前手)でストレートを打つ。

これは、相手からすると、右(左)ストレートが飛んでくると思っていたところに、左(右)ストレートが飛んでくるため、一瞬脳が混乱してしまいます。

アッパーをパーリング➠手を離す➠空いたところにボディ打ち

相手のアッパー押さえつけるように強めにパーリングする。

自分の手瞬時に離す

相手の腕浮く

空いたボディパンチを打ち込む

これは、かなり高度なテクニックですが、知らない方も多いので、実戦で使用すると、相手の不意を突くことができます。

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