打ち方
オーソドックスをモデルに解説していきます。
サウスポーの方は左右を反対にしてお読みください。
👇まずは
足➠腰➠肩の順にパワーを増幅させる
右足のつま先を内側に絞るときに生じるパワーを腰の回転で増幅し、さらに肩の回転によってパワーを増幅させる意識を持つことが大切です。
つまり、足→腰→肩の順にパワーを伝えていくことが大切になります。
このようにすることによって、手打ちではなく、全身でパンチを打てるようになります。
また、右足のつま先を内側に絞るときは、足裏が地面から離れないようにご注意ください。
地面に落ちているタバコの火を足で踏み消すようなイメージです。
👇つぎに
まっすぐに右拳を前に出す
右の拳を一旦下げてから打ってしまわないようにご注意ください。
なぜなら、拳を下げることによってモーションがつき、パンチのスピードが落ちたり、相手に見切られやすくなってしまうためです。
👇また
右腕を伸ばしきる
肘が固定されるまでしっかりと腕を伸ばすように意識してください。
肘が折れた状態でパンチを打つと、力が分散してしまうためです。
折れた槍で獲物を突いても獲物を捕らえることができないのと同じです。
👇さらに
当たる瞬間に拳を握る
一歩先に照準を合わせる
人は、自分が思っている以上に、拳を握るタイミングが早いです。
当たる瞬間に握ろうとしても、実際には、当たる前に拳を握っていることが多いです。
これは防衛本能からなのでしょうが、拳を握るのが早いと、スピードが遅くなってしまいます。
では、どうすればよいのでしょうか?
それは、もはや握らないことです
「それでは危ないではないか。」という声が聞こえてきそうです。
しかし、握ろうとしなくても、人間というのは無意識に握ってしまうものなのです。
ですから、当たる位置よりも少し先を狙ってパンチを打てば、当たるタイミングで拳を握ることができるようになります。
👇では、具体的に、練習の中でどこら辺を狙ってパンチを打てばよいのでしょうか?
イメージトレーニング
シャドーのとき
シャドーをするときは、目の前を飛んでいる虫を素早く生捕りにするイメージを持つと良いです。
このようにすることで、パンチの引きを速くし、拳を握るタイミングを養うことができるようになります。
なお、「生捕り」といったのは、拳を強く握らないようにするためです。
サンドバッグのとき
サンドバッグを打つときは、拳を握らず、サンドバッグをマンガ肉に見立て、中心の骨を素早く引き抜くイメージを持つと良いです。
このようにすることで、サンドバッグにパンチが当たる瞬間に、自然と拳を握ることができるようになります。
ミットのとき
ミット打ちのときは、ミット持ちのアゴを素早くタッチするイメージを持つと良いです。
このようにするこどで、ミットにパンチが当たる瞬間に、自然と拳を握ることができるようになります。
👇このとき
左半身を後方に引かない
右半身を前方に出すのにつられて左半身が後方に引っ張られないように注意します。
そうしないと、相手のカウンターが直撃する可能性が高く、何より力が逃げてしまう危険性があります。
ところが、よく試合観戦させている方の中には、「あれ⁉」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
なぜなら、井上尚弥選手やゴロフキン選手、カネロ選手など一流のボクサーでも、右ストレートを打つときに、左半身を大きく後方に引いていることがあるからです。
私は当初、左半身を後方に引くことで、右半身をより前に出しやすくなり、ひいては、右ストレートの飛距離を伸ばすことができると考えました。
そして、実際に、計測してみたところ、確かに拳一個分ほど飛距離は伸びました。
ところが、元のポジションに戻るのに、いつもよりも時間がかかってしまいました。
そこで、疑問を解消したいと思い、ボクシングの玄人たちにヒアリングしてみました。
そうすると、多くの方は、「力んでいるからだ。」と答えられました。
それが正しいとすると、やはり、左半身は後方に引っ張られないようにするのが無難だと思います。
👇最後に
パンチの引きを意識する
打ち終わった後は、すぐに右手を引き、アゴの位置に戻すように気をつけてください。
そうしないと、左フック等のカウンターをまともに貰ってしまうからです。
なお、パンチの引きを速くするトレーニングは、先ほど拳を握るタイミングについて述べた箇所で紹介した通りです。
レパートリー
ボディストレート
右ボディストレートも通常のボディストレートと基本的な打ち方は異なりません。
異なるのは、足の踏込みの深さのみです。
ただし、注意すべきポイントが二つあります。
一つ目は、身体が前傾しないようにすることです。
身体が前傾すると、背骨が上手く回転せず、パンチの威力が上がりません。
さらに、下を向く形となるため、死角からパンチを貰うリスクが高まります。
二つ目は、左膝よりも前に顔が出ないようにすることです。
顔が膝よりも前に出ると、顔にカウンターを貰うリスクが高まるためです。
2024年7月に行われた中谷潤人VSアストロラビオ戦において、中谷選手(サウスポー)の放った左ストレートがとても綺麗でしたね。
コークスクリュー
通常のストレートの応用形です。
相手のアゴに右の拳が当たった瞬間に、右の拳を反時計回りに回転させて打つパンチです。
人間のアゴは、一般的に、先が細くなっています。
そのため、拳に捻りを加えてあげることで、アゴの先端にパンチを当てやすくなります。
そして、人は、アゴの先端(力点)にパンチを貰うと、首の付け根(支点)を中心として、脳(作用点)が大きく揺れるといった特長があります。
すると、平衡感覚が失われ、一旦ダウンしてしまうと、なかなか起き上がれない状態となります。
いいことづくめのようにも見えますが、拳に捻りを加える分、通常のストレートに比べ、若干スピードが遅くなりやすいこと、パンチを打った後の引きが遅くなりやすいといったデメリットもあります。
そのため、しっかりと通常のストレートを正確に打てるようになり、パンチの打ち終わりの引きが素早くできるようになってから挑戦するのがおすすめです。
オーバーハンド
オーバーハンドというのは、まっすぐに打つストレートとは異なり、脇を大きく開け、打ち下ろすようにして打つパンチのことをいいます。
オーソドックス同士の対戦では、左ジャブに右のオーバーハンドを被せるようにして打つシーンが良く見られます。
タメが大きい分、一撃必殺の強力なパンチが打てる反面、カウンターを貰うリスクが大きいことや、的中率が低いといったデメリットがあります。
しかし、打ち方を工夫することで、カウンターを貰うリスクを減らし、的中率を上げることができます。
👇そこで
カウンターを貰うリスクを減らす方法
顔の位置をずらしながら打つ
オーソドックス対オーソドックスの場合において、右のオーバーハンドを打つときに一番怖いのは、相手の左カウンターを貰ってしまうことです。
そこで、右のオーバーハンドを打つときは、上体を左に傾けながら打つのがコツとなります。
相手が左ストレートを返してくる場合であれば、左に避けながら右のオーバーハンドを打ち込むことができます。
また、相手が左フックを返してくる場合であれば、相手の左フックの進行方向と同じ方向に上体をずらしてあげることで、相手のパンチの威力を弱めることができます。
👇このとき
頭は下げない
頭を下げてしまうと、右アッパーや右フック、右の打ち下ろし等のカウンターを貰うリスクが高まります。
👇また
目線は相手から離さない
よく頭の位置を変えるときに、目線を下に向けてしまう方がいらっしゃいます。
このようにすると、上方向の視界が狭くなり、見えない位置からカウンターを貰いやすくなります。
そして、見えない位置から打たれたパンチは、不意を突かれた形となるため、大きなダメージを負ってしまいます。
👇さらに
左のガードをしっかり上げる
これもよく見かけますが、右のオーバーハンドを打つときに、左のガードが下がってしまうことがあります。
言うまでもないことですが、ガードが下がるとカウンターを貰うリスクが高まり非常に危険です。
また、左のガードをしっかりと上げておくことで、左手が身体の中心に集まることになります。
左手が身体の中心に集まっている方が、遠心力が強くなります。
遠心力が強くなると、腰の回転が速くなります。
腰の回転が速くなると、右のオーバーハンドの威力も増大します。
👇つぎに
的中率を上げる方法
ガードを正面で構えている相手に対しては、ガードが薄いサイドからオーバーハンドを打つとヒットしやすくなります。
一方で、ガードがサイドよりの相手に対しては、ガードの上から打つ形となります。
右のオーバーハンドの場合、ガードの上からでも相手に効かせることもできます。
しかし、よりクリーンヒットさせるためには、相手のガードを正面に誘導するのが効果的です。
具体的には、左ジャブや右ストレート等ストレート系のパンチを強めに打ち、相手がガードを正面に移動させたところに、サイドから右のオーバーハンドを打ち込むのがおすすめです。
補講
野木さんの書籍には、近距離で打つ右ストレートが紹介されています。
具体的には、右腕を折りたたみ、右肘を上げた状態から、はじくようにして打つパンチです。
このパンチは中間距離にいる相手に対しては、メリットもあります。
なぜなら、下から拳が上がってくるようなパンチとなるため、軌道に変化を加えることができ、相手の意表を突くことができるからです。
とりわけ、ハの字型にガードを固めている選手に対しては、非常に当てやすいパンチとなっています。
しかし、近接攻撃としては不適切であると私は考えます。
なぜなら、腕を曲げた状態で右ストレートを打とうとすると、力が入りにくいためです。
では、どうすればよいのでしょうか?
答えは単純で、フックやアッパーで対処すればよいのです。
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